新学期から主婦もパートで新生活  気になる「配偶者控除」の範囲

新学期が始まる4月、主婦も「子どもが学校から帰宅するまでの時間働こう」と、新生活を迎えるケースも少なくない。ただ「パートするなら配偶者控除の範囲」と、税金を考慮した働き方を考えることが多い。そこで「配偶者控除」「配偶者特別控除」について考えてみたい。
パートタイマーとして働く主婦は、年収が一定額以下の場合、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」のいずれかにより、年末調整で一定の金額の所得控除が受けられる。税金における「控除」とは、ある要件を満たすことで、本来の支払うべき税額もしくは、稼いだ所得から一定額を差し引いて税額がきまるというもの。
そのうち「配偶者控除」は、配偶者が無収入または少ない場合に、納税義務者の所得から38万円(配偶者が70歳以上なら48万円)の所得控除ができるもの。控除の分だけ、「所得」が小さくなるため、納税額を低く抑えることができる。つまり、パートとして働く主婦をイメージして作られた制度だ。
所得税法では「配偶者控除」の適用について、「1、民法上の配偶者であること(内縁関係は含まない」「2、納税者(夫)と生計を一にしている」「3、年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」「4、青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと」の4要件を満たす配偶者(妻)としている。
このうち配偶者控除でよく耳にする「103万円の壁」とは、この「3」要件部分について該当するか否かが問題になる。たとえば、妻のパート収入が103万円以下なら給与所得控除として65万円が引かれるため、合計所得金額は38万円以下となり、夫が配偶者控除を適用できる。パートで働く妻が年収を103万円以下に抑えようと勤務時間の調整をするのはこの理由のためだ。この「103万円の壁」が、2018年からの配偶者控除の見直しで、優遇が受けられる壁のラインが「年収150万円」に引き上げられた。そのため、2018年からは「103万円の壁」は、自分自身が所得税を払うかどうかだけということになった。
また、2018年からは、納税者本人の所得要件が加わり、所得が900万円を超えると控除額が減り、所得が1千万円を超えると控除がなくなる仕組みとなった。とはいえサラリーマンの場合は、基礎控除や給与所得控除があるため、実際に「配偶者控除」が減額する所得900万円でも額面にすると「1120万円」以上で、控除が受けられなくなる所得1千万の場合で、給与の額面は「1220万円」からとなる。
もし、妻のパート収入が年額103万円を超えてしまった場合でも、その場合は「配偶者特別控除」が活用できる。
2017年までの「従来型配偶者特別控除」は、妻の年間の合計所得金額が38万円を超えて「配偶者控除」が受けられなかったとしても、所得が76万円未満であれば、控除を受けられるというもの。これが、2018年からの配偶者特別控除は、妻の所得が85万円未満であれば、配偶者控除と同じ38万円の控除があり、所得123万円までは段階的に控除が受けられる。従来型配偶者特別控除では「年間所得76万円」に、給与所得控除額の65万円を足して、年間収入141万円となることから、「141万円の壁」と呼ばれていた。これが2018年からは、年間所得123万円までが適用になり、給与所得では201万円までが控除の対象となっている。
また、配偶者特別控除も配偶者控除同様に納税者本人の所得が「1千万円以下」という所得制限が設けられている。
配偶者特別控除は配偶者控除と同様に、納税者本人の給与収入が1120万円までであれば、配偶者の給与収入150万円までは配偶者控除と同額の38万円の控除があり、年収201万円まで段階的に引き下げられながらも控除される。納税者本人の収入と配偶者の収入の両方で控除額が決まるという仕組みだ。いずれにしても、従来型配偶者特別控除は「141万円の壁」だったが、2018年からは「201万円の壁」に変わったわけだ。
この所得税による「壁」がいくつもあったことから、パートで働く人が混乱しているわけだが、これに社会保険の「壁」も加わり、さらに分からなくさせている。
社会保険は、「健康保険」と「厚生年金」から構成されているが、専業主婦は夫の扶養家族となるため、自分で社会保険料を払うことはあまりない。しかし、パート収入が「130万円」以上となった場合、夫の扶養から外れて、妻が自分で社会保険に加入し、保険料を負担しなければならなくなる。これが社会保険の「壁」だ。その基準となる年収は2つり、それが「130万円の壁」と「106万円の壁」。
「106万円の壁」は、106万円以上稼いでおり、「正社員が501人以上の会社でパートをしている」「収入が月8万8000円以上」「雇用期間が1年以上の見込み」「所定労働時間が週20時間以上」「学生ではない」の条件をすべて満たしている場合、社会保険料を支払う必要が出てくる。ちなみに、この106万円の収入には、「残業手当」「通勤手当」「賞与」は含まれない。
一方、「130万円の壁」だが、130万円以上稼いでおり、「『106万円の壁』の条件を満たさない」「月収が10万8334円以上(年収130万円以上の見込み)」の条件を満たした場合に、会社の社会保険に加入するか、社会保険がない会社なら国民年金と国民健康保険に加入する必要がでてくる。このうち、月収には「残業手当」「通勤手当」「賞与」は含まれる。
そもそも、「130万円の壁」があったのだが、2016年の改正以降、一定条件も満たすと「106万円の壁」が待っているという仕組みになった。
最後に、住民税にも「壁」があるのだが、年収100万円を超えると住民税が掛かるというもの。住民税は、所得金額に応じた所得割と一律の金額が課せられる均等割があり、一定の場合には所得割と均等割がともに非課税になるのだが、金額的には少ないのであまり気にする必要はないかもしれない。