経理ミスを知りながら修正しなかったら重加算税の可能性も

確定申告の繁忙期も一段落し、税務署としてはいよいよ、平成30事務年度(平成30年7月~同31年6月)追い込みの税務調査となる。

税務調査で少なからず指摘されるのが、顧問先の経理ミスで、仕入及び相手買掛金の二重計上をしてしまっているケースだ。

顧問税理士としては、二重計上ミスを把握した時点で社長と経理担当に修正するように指導したにも係らず、経理担当が修正仕訳を失念、過少申告であることを税務調査で指摘され、場合によっては重加算税が賦課されることがある。単なる経理担当者の失念なので、税金のペナルティーである重加算税の賦課用件である「仮装又は隠蔽」に当たらないのではないかという意見も少なからずあるが、一概に重加算税ではない言えるものでもないのだ。

裁判例では、経理ミスを知りつつ訂正をしなかった場合には仮装行為があったものとして、重加算税が賦課されている事例がある。平成3年3月29日の大阪地裁判決では、期中において経理上の誤りなどによって、行為者の意識しない事実に相反する経理処理がなされた場合であっても、申告期限前にこの誤処理を発見しながら、ことさらこれを訂正しなかった場合には、訂正しないという積極的な行為がある以上、その時点で事実を仮装又は隠ぺいしたことになり、また認識して訂正しない点で故意が認められることになるから、「納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したというべきである」としている。

最終的には事実認定によるが、単なる失念・再処理誤りであれば重加算税は賦課されないだろうが、行為者が意識しない、事実に相反する経理処理がなされた場合であっても、申告期限前に誤処理を発見しながらも、これを訂正しなかった場合には、訂正しないという積極的な意識がある以上、「故意」として認識され、事実を「隠ぺいし又は仮装した」ことになる可能性も高い。

重加算税の「仮装又は隠蔽」の考え方については、税理士としてもよく研究し、顧問先にも日頃からその怖さを指導しておきたいものだ。