増税だけはしっかり政府 いつの間にか「防衛特別法人税」を創設

激しい交戦を続けてきたイスラエルとイランが停戦合意した。しかし、世界は「平和」を理由に戦火が続く。こうしたなか、米欧32カ国で構成する北大西洋条約機構(NATO)は、加盟国の防衛費目標を現行の国内総生産(GDP)比2%から3.5%に引き上げ、防衛に必要なインフラ整備などの防衛関連費と合わせて5%に拡大する。米国は日本を含むアジアの同盟国にも、NATOと同水準まで防衛費を引き上げるよう求めており、日本にも影響がありそうだ。

そうは言っても実は、日本の令和7年度の防衛費は過去最大。なんと、8兆4748億円に上る。令和7年度税制改正では、減税策などが上がるたびに「財源は!?」と言ってきた政府与党だが、防衛費については着々と準備を進めてきた。

これが防衛特別法人税の中身

この過去最大の防衛費を賄うため同7年度税制改正より防衛費目的の法人税を創設。その名も「防衛特別法人税」だ。令和8年4月1日以降に開始する事業年度から適用され、法人税を課されるすべての法人が原則として対象となる。

 具体的には、各法人の「基準法人税額」から年500万円の基礎控除額を差し引いた金額に対して、税率4%を乗じて計算される。基準法人税額とは、所得税額控除や外国税額控除などの特例を適用しないで算出した法人税額を指す。

(出典:国税庁パンフレットより)

 対象法人は、法人税の納税義務がある法人全般で、株式会社、合同会社、一般社団法人、公益法人などが含まれるほか、人格のない社団や法人課税信託の引受けを行う個人も対象となる。

 一方で課税対象とならない法人は、法人税の納税義務がない公益法人や収益事業を行っていない人格のない社団等のほか、基準法人税額が年500万円以下(所得が概ね2400万円以下)の企業が対象外。

防衛費増税は恒久的な措置!?

 この防衛特別法人税で何とも言いようがないのが、恒久的な制度として導入されており、終了時期は明示されていまいのだ。今後の防衛政策や財政状況に応じて、税率や制度内容の見直しが行われる可能性もある。

 ちなみに令和7年度予算の防衛費は、前年度比9.7%増で過去最大の8兆4748億円。同4年12月に策定した防衛力整備計画同計画で定めた9年度までの5年間で防衛力の抜本的強化に必要な事業費43兆5千億円のうち5~7年度で62%を積み上げる計画だ。

例えば、同7年度防衛予算では、敵のミサイル基地などを攻撃する「反撃能力」の整備に9700億円、無人機の開発・取得に1032億円、自衛官の処遇・勤務環境改善で4097億円、多数の小型衛星で目標を探知・追尾する「衛星コンステレーション」の構築に2832億円、無人装備の拡充に向けて洋上での情報収集・警戒監視を強化する滞空型無人機「シーガーディアン」2機の取得に415億円を計上している。

自民党の国防族重鎮は、43兆円について円安などの影響によって実質1兆円程度の減額になると予想する。「本当に足りなくなれば、政府を動かさなければいけない」と鼻息も荒い。

防衛特別法人税は日本の安全保障政策と企業の税務に大きな影響を与える制度であり、企業はその動向を注視し、適切な対応を講じることが求められる。