調査官に「自宅を見せてください」の対応

某クリニックの院長とは長い付き合いだ。そのクリニックに昨秋、税務調査が入った。最近では、かなりの売上を上げているので「何時かは来るよ」と忠告していたのだが、開業していらい税務調査は1回もなかったので安心しきっていたようだ。

調査が入るとなると、顧問税理士に早速電話。「調査対応はすべて任せた」と、院長本人は安心しきっていた。いざ調査になると、病院はもとより調査官は自宅も見せてほしいと言ってきたという。院長はことの展開にびっくりしていたが、それもそのはず、自宅とは別にマンションを借りていたのだ。実は妻とはこの数年別居状態で、自宅は妻が子どもと暮らしており、自分はこのマンションに住んでいる。いやな予感がしたそうで、顧問税理士に「見せたくない。何とかしてくれ」と泣きついた。すると、「大丈夫、任せておいてください」と、その顧問税理士は威勢よく調査官に対して「自宅は個人のプライベートな部分なので遠慮願いたい」と一蹴。この調査とは関係ないこと、調査権限を逸脱している主張した。

ところが、調査官も慣れたもの「書類も自宅に持ち帰ったりするんですよね。保存場所に関わらず、法定書類だけでなく仕事絡みで作成しているものはおよそすべて質問検査権の対象となります」と逆に言い込められてしまった。

後日、その話を飲み屋で聞いたのだが、どうも顧問税理士はあまり税務調査対応の経験がなかったようで、書物や研修会で身につけた知識で対応したようだ。この院長に、「税理士といっても色々いるから、報酬の高低で選んじゃだめだよ」いうと、かなり納得していた。