消費税率のアップを逆手にとって金で資産運用

今年の10月1日から消費税率が8%から10%に上がるが、ささやかな資産運用の対抗策として「金」の運用はどうだろうか。短期取引というよりも長期で保有することお勧めするが、消費税率がアップするときだからこそ使える“ウルトラC”なのだ。

短期で見ると値動きの上下はあるものの、「金」の価格は経済の発展と共に上がってきた。純金が一般的な投資対象ではない時期も含めて、1980年に付けた「1g=6945円」が歴代最高値。その後、1998年の865円に底を付け、国内金価格は上昇し続け、最近は5千円前後だ。
専門家の間でも「この上昇トレンドは波を打ちながらも、向こう十数年は続く」とさえ言われている。
バブル経済崩壊後、経済が上向いてからの金価格の推移はこれからの金投資を考えていく上で重要だ。2000年に「1g=1064円」だったが、アップダウンを繰り返しながら2019年1月には「1g=4880円」、3月1日には5100円まで値上がった。
今後も純金の需要は伸びながら、埋蔵量と産出量が徐々に減っていく。これが純金積立の価値が高まり続ける根拠であり、0.01%未満しかない銀行預金よりも金価格の上昇率に期待する人が増えている要因だ。
短期的には最近の政治的な背景も影響してくるが、「有事の金」と言われるだけに世界的に経済や政治が不安定なときにこそ強みを発揮する。
うんちくはこの辺にして、金は、税金面からも実は優遇されているのをご存じだろうか。今年は10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられるが、消費税においても恩恵があるのだ。
どういうことかと言うと、金は購入時に消費税を支払う一方で、売却時には逆に消費税を受け取ることができる。つまり、金の価格が上昇しなくても、金を保有していて、その間に消費税率がアップすれば、売却時には消費税アップ分だけ得をするというわけ。
たとえば、3月の金価格が1グラム当たり5100円だったとする(手数料は計算に含めない)。金地金商の店頭で、金を10キログラム購入すると、金地金代金5100万円と8%の消費税408万の合計5508万円を支払うことになる。
これを10月1日以降の消費税率10%になってから売却。このときの金価格が1グラム当たり3月時点と同じ5100円だったとすると、金地金の売却代金は5100万円。消費税分は510万円になることから、合わせて5610万円の売却代金を受け取ることができる。つまり、消費税率が8%から10%に上がったことで、102万円の恩恵を受けることになる。
世のなかには多くの金融商品があるが、金は「個人が消費税の恩恵に浴することができる数少ない金融商品」とも言える。
また、金は売却して「売却益(譲渡益)」を得た場合には、株投資や外貨投資など他の投資と同じように税金がかかってくるが、所得控除が認められている。
金の売却益は、所得税法上、「譲渡所得」に分類され、他の所得と合算して総合課税の対象になるがものの、所有期間に応じた控除が認められている。
前述した事例のように今年3月に購入し、これを5年以内に売却した場合(短期所有)、譲渡益から特別控除分50万円を控除した金額が短期譲渡所得とされ、課税の対象になる。
一方、購入後5年を超えて所有し、その後、売却した場合(長期所有)では、譲渡益から控除分50万円を差し引きした金額を長期譲渡所得とし、さらにその半分の金額が課税の対象になる。5年超所有すれば、税金は半分になるというわけだ。その面では、金の保有は5年以上が有利になる。
金はこれまでも「有事の金」といわれ、中東戦争や旧ソ連軍のアフガン侵攻、フォークランド紛争などの際に、金相場は急騰場面を作ってきた。2001年9月の米国同時多発事件でも有事に強いことが証明され、富裕層だけでなく広く資産運用の商品として購入されている。「安全なところへ資産を避難させる」というムードが高まったときには、歴史的にも金はその最大の避難先となっており、金を国際的な分散投資の対象とする動きは今後も強まっていくだろう。