チュートリアル徳井 税務調査の指摘で考えられる本当の不正行為とは・・・

お笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実(44)さんが経営する株式会社チューリップ(東京・世田谷区)の所得隠しなどに関する謝罪会見が10月23日夜、突然開かれた。多くのメディアで取り上げられていることから、おおまかな事実関係はご存知な方が多いと思う。謝罪会見では、課税当局による法人税調査が行われ、2018年から7年間遡って調査されたと明かしているが、実は税務調査においてこの7年遡りというのは本意味を持っている。

謝罪会見で徳井さんは、納税額について、「1憶5千万円・・・」とつい口を滑らし、傍にいた関係者から何か言われ、すぐに「法人税として3400万円をすでに納税した」と話を変えた。
その場にいた記者からは、それについての突っ込みはなかったが、この口を滑らした1憶5千万円には非常に大きな意味がある。
会見では、2016年から18年までの3年で法人の所得約1憶2千万円を申告しておらず、12~15年までの4年間に約2千万円が旅行代や洋服代などが所得隠しと判断され、重加算税などを含めた追徴税額は約3400万円になったという。
徳井さんは、会見で嘘は言っていないだろうが、この会見を聞いて、3年で1憶2千万円なら1年で4千万円の売り上げなのかと思った人も多いのではないないだろうか。だから、法人税分として3400万円の追徴税額なのかと。
法人所得の計算方法を理解していないと、何がなんだかわからないだろう。この金額は、必要経費を差し引いて残った利益を指している。つまり、徳井さんの給与などの報酬、交通費、家賃などもろもろの費用を差っ引いた後の金額と言うことだ。

交通費や家賃などは、それほど大きな負担ではないだろうが、徳井さんの給与となると、そんな低くはないだろう。3期分も無申告であるなら、当然、源泉所得税は納税していないわけで、その分の負担額は大きいはずだ。サラリーマンなら毎月の給与から引かれている項目だ。徳井さんの場合、会社の役員でもあるわけで、役員報酬として得ていたものと思われるが、この部分は会社が徳井さんの給与から源泉徴収して、代わりに会社が納税する。所得税は年収4千万円を超えれば、そこから479万6千円控除した金額に45%の税率が課税される。
つまり、徳井さんが口を滑らした1憶5千万円を納税したのなら、法人税などもろもろ引くと、源泉所得税だけで1憶円以上課税漏れを指摘されたことになる。税額で1憶円だとすると、1年で約3千万円の源泉所得税が発生していたのと考えられ、給与は7千万円ぐらいは取っていたものだと推察される。もしかすると、個人的なお金を経費で落としていた分が、現物給与や認定賞与とされたことも考えられ、このあたり、謝罪会見に出席していた記者にはぜひ突っ込んだ質問をしてほしかったところだ。ここまで突っ込めたら、かなり細かな不正部分を明らかにすることが出来ていたはずだ。

それにもう一つ注目したいのが、7年遡って調査されたこと。通常長くても5期であり、悪質でなければ7期というのは遡りすぎ。それに経費部分の否認については、衣装代や旅行、交際費などよくある話であり、全部が否認されたわけでないと思われる。しかし、会見ではこの部分に関して「所得隠し」があったと判断され、税金のペナルティー措置である重加算税が課せられたとしている。
つまり、衣装代が経費で落とせるのか、個人的な旅行も会社に付けていたとかで重加算税を賦課されたような話なのだ。なんとも納得のいかない話だ。おそらく、もっと悪質な行為があったと認められたから、重加算税が課せられたと見るのが自然ではないか。
脱税により健康食品会社「メディアハーツ」(東京)の社長の座を失った三崎優太氏は、徳井さんが脱税犯にならなかったのは、「課税当局の忖度があったはず」と、メディアで意見を述べているが、無申告の3期について重加算税を賦課するのはかなりハードルが高いし、無申告である限り、所得を隠していたり、どこかに移していたわけではないので、立件できなかったのだと思う。つまり、法律的に脱税犯として立件が難しかったものと思われる。
筆者として、マスコミ報道が「東京国税局が税務調査を行った」とあったことから、泣く子も黙る「資料調査課が動いていたのでなはいか」と思っていたが、どうやら、国税局ではなく、税務署の法人税による税務調査との見方が強い。
そのため、7期分遡って、重加算税もかけられ、無申告分から源泉所得税1憶円を追徴課税できたら、署としては大きな実績だ。調査時期と納付時期が昨年12月ということを考慮すれば、調査担当者として年末までに調査を終わらせられるか、大きな問題だ。というのも、年が明ければ税務署の一番の繁忙期である確定申告シーズンにも突入する。署あげてのイベントだけに、この期間は確定申告に注力する必要がある。そして、これ以降に実績を上げても、国税組織の事業年度の関係から勤務評価に反映されにくいため、現場の調査官としては、できるだけ年内に決着がつけたかったものと思われる。
サラリーマン同様に、勤務評定に反映されなければ、人事にも反映されず、さらには将来の出世にも影響する。税務職員としては、年末までの調査をまとめ上げ、上司に報告したいのだ。
その意味でも、徳井さんが、税務調査を受け、担当者の指摘通りに修正申告や通帳税額を納めてくれるのなら、この事案を早く解決したいと考えたとではないか。
徳井さん的には、納税額は大きいものの、これでマスコミにも知られずに済むなら、調査を長引かせないで早く終わらせたい考えたものと推察される。
徳井さんにとっては、無申告だったのはずぼらで税金に関する無知によるもので、所得を意図的に他に隠したりしたのでないと言い張れば、脱税犯までにはならないで解決できる。脱税は、あくまで意図的に隠しているどうかで、無知やうっかりミスでは、そこまで深く犯罪性が問われない。
25日の追加報道によると、徳井さんは2012年も無申告だったことが報道された。この男、本当に税に対して無知なのか、これなら逃げれると考えて、無知を装っているのか、もしそうだとしたら、脱税犯並みのワルと言える。